名称未設定の森

雨が振りそうな世界が何年も続く惑星

森のような、森でないような
あれはなんだろう。

普段は入り口のありそうな森など見かけないが、
一箇所だけ、人が通ったような形跡のある、あたかも森の入口のような場所がある森を見つけた。
ただ先の見えない鬱蒼と茂った木々によって暗く闇へと続きそうな一本道。
何個も迷子の靴がおちている。

進んでいくと、トンネルのように円筒にはなっていないはずなのに、脳の奥を突き刺し、思考をかき混ぜるような笑い声や電車が通る音が聞こえる。

情報の渦に飲み込まれそうになる。

真夏の校舎から校庭へ駆け出した日のような刺激と立ちくらみがする。
騒音はまだ脳内に残響として残っている。

誰もいない校庭。
約束していたはずなのに。

自転車進入禁止のパイプが入り組んだ入り口のある公園がいくつも。

自分には伝えてくれなかったどこか別の場所できっと遊んでいるのかも。

どうして。

日が暮れるまで待っていた公園

音の割れた夕焼け

いつも。
いっつもだ。

映画のように
何度も
何度も
寸分の狂いもなく上映される。

よく消させるための
よくかける
かけた時間を構成する
ちりが空に浮いている。

あの日や
その日

うまく森のエネルギーで消化できなくなったおはなしが何本も溜まっていく。

廃棄処分はお金がかかるし
燃やしたら、煙が立ってバレてしまう。
こんな朽ち果てそうなおはなし、誰かに譲るわけにもいかない。
誰にも迷惑がかからないように、見つからないように森の奥にしまっておく。

どうにもならなくなった、学校の机の奥やランドセルの底のように。

でも、だんだんと森も蓄えきれなくなり
土砂崩れとなって溢れ出す。

そうして森なのか森でないのか、だんだんと境界線がぼやけてくる。

やがて森が森たらしめるものが崩れてゆく。
他の惑星の空気が流れ込んでくる。

重い足で夕日を蹴ったあの日の夢のそのまた向こうの空想話